井須 和男 医師

[勤務病院]
独立行政法人国立病院機構
北海道がんセンター
外科系診療部長

〒003-0804
札幌市白石区菊水4-2
TEL/011-811-9111

URL/http://www.sap-cc.org/


他科との連携により、機能温存・再建を

photo1 骨軟部腫瘍とは、骨組織や、筋肉および脂肪などの軟部組織に生じた腫瘍の総称。骨組織と軟部組織を分けて、それぞれ骨腫瘍、軟部腫瘍と呼ぶ。良性と悪性があり、悪性腫瘍のうち骨や筋肉、神経などから発生したものが肉腫だ。
 一般的に知られる骨肉腫は、この悪性骨腫瘍の一つ。小児から青年にかけて発症する例が多いとされ、このほかにはユーイング肉腫、中年以降に多い軟骨肉腫がある。痛みを伴い、X線やMRIなどの画像診断で悪性が疑われ、最終的な診断には組織を調べる生検が必要となる。
 一方、悪性軟部腫瘍は、小児では横紋筋肉種、若年層では滑膜肉腫があり、発生数が多いのが中年以降に見られる脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫、平滑筋肉種などだ。軟部腫瘍はほとんど痛みがなく、腫瘤が形成されることで自覚していくことがほとんど。ゆっくり大きくなることもあれば、急激に大きくなることもあり、5センチ以上の大きさになると悪性の可能性が高いとされている。
 悪性骨軟部腫瘍はまれな腫瘍。代表例である骨肉腫では、発症は10代前半が一番多く、人口10万人に対して男0.9、女0.7。1989年~1994年では1041例が登録されている。少ない症例数の分、正確な診断と治療には専門的な知識と経験が欠かせないのだ。

治療は手術が主体だが、機能温存・再建に尽力

 悪性骨軟部腫瘍は、ほとんどが膝の周りにでき、残りは肩に発生するケースが多い。骨肉腫ができただけでは痛みはなく、肉腫が大きくなって骨を破壊することで痛みの症状が現れる。そのため受診したときには、骨の一部が破壊されていることが多いという。
 悪性腫瘍の治療には現在、手術、化学療法、放射線の3つの治療法があり、組み合わせるのが一般的だ。井須外科系診療部長は、「悪性骨軟部腫瘍の治療は手術が主体となります。この場合、腫瘍細胞が肉眼的に見える境界を越えて周囲の正常組織内に散らばっていますので、腫瘍だけではなく、その周辺の正常組織を一緒に切除する広範切除が不可欠。再発を起こさないためですが、同時に機能温存および切除後の再建手術も重要となってきます」。

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抗がん剤併用で5年生存率が上昇

photo1 この再建手術では、骨の欠損に対しては他部位の骨を採取して移植する自家処理骨移植と、人工関節などの人工物を挿入する方法がある。また血管を切除した場合には自身の静脈あるいは人工血管を移植して血行を再建。筋肉や皮膚の欠損の場合には、筋膜弁などでカバーする。
「悪性骨軟部腫瘍の手術と言えば切断が主流であった時代ははるか昔のこと。治療にあたっては、原則的に病状、将来の予想、治療の選択肢を説明し、希望に添った治療法を選択するよう努力しています」と井須外科系診療部長は語る。
 また悪性骨軟部腫瘍の大きなリスクは転移。肺が最も多く、そのほかに骨、肝臓、リンパ節などに見られる。これは手術時の検査では確認できないくらいの小さな転移があり、それが次第に大きくなるためと考えられている。
 そのため現在では、手術の前後に抗がん剤を使った化学療法を実施する。骨肉腫では、化学療法をおこなわない場合の5年生存率は20%以下だが、抗がん剤を使用することにより5年生存率は70%程度に上昇している。
 こうした治療には他科との連携は欠かせず、井須外科系診療部長は「当センターでは、化学放射線治療などをおこなう放射線科、再建手術に携わる整形外科、身体的・精神的な苦痛を和らげる緩和ケア内科などとの連携を強め、病院全体で悪性骨軟部腫瘍に対する治療を進めています」と語る。

(2012/03/15)

ドクターの略歴、活動内容

井須 和男(いす かずお)/1950年生 

プロフィル

1975年3月
北海道大学医学部卒業
1975年4月
北海道大学整形外科にて研修開始
1981年4月
国立札幌病院整形外科
1997年4月
国立札幌病院整形外科医長
2004年4月
独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター
手術部長
2011年4月
独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター
外科系診療部長

所属学会・資格

1979年4月 身体障害者福祉法指定医
1983年4月11日 日本整形外科学会専門医(旧称認定医)
1986年3月25日 北海道大学医学博士
日本整形外科学会
日本癌学会
日本癌治療学会